KTTK111のオフ活動のお知らせや短編置場、時々雑談。
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「海」「飛行機雲」「揺れる」
なぁ。
雲ひとつない青空が、窓枠に切り取られている。
まるで、フォトフレームのようだと月島は仰向けに寝転がった状態でそれを見ていた。
なぁ。
少し遠くて聞こえる甘い声に、返事をするのも億劫で無視を決め込んだのが悪かったのか。
視線の先を遮るように顔を覗き込まれた。
なんですか?
面倒くさくて、瞬きで問いかける。
通じているのかはわからないけれど、とりあえず、声を出したくなかった。
きっと、かすれていてろくに話せないのだ。
それくらい、さっきまで、喘がされていた。
ペットボトルの水を飲んだけれど、喉はからからに渇いているような気がした。
「さっきから、何を見てんだよ」
黒尾はちゅっと月島のこめかみにキスをして、その隣りに寝転んだ。
狭い。暑苦しい。
そんな風に思ったけれど押しのけるのも怠い。
話すことさえままならないのだから、どうしようもない。
全部を諦めて、月島は再び窓枠から見える切り取られた青空を眺めた。
鳥の影が横切ったように見えた。
雲もなく、ただ、青だけがそこに在ると思っていたのだけれど、窓の外は静止画ではなかった。
理解していたようで、していなかった自分に少しだけ驚く。
腕も足も腰も重い。
自分の体じゃないみたいに、指先ひとつ動かすのもしんどかった。
半分は求めた自分のせいだし、もう半分は箍がはずれてしまった黒尾のせいだ。
休日の、こんなに天気の良い昼間から。
動けなくなるほどに、求め、求められ、体を重ねた。
「目に、空が映って、キレイだな」
ふ、と、笑う気配が耳元に届く。
ああ、そうだ、しゃべられないんだった。
そんなはずはないのだけれど。
瞬きを何度か繰り返しているうちに、青空を分断する白い線が窓枠の端からすうっとのびてきた。
斜めに、真っ直ぐ、空は二つに分かれた。
白い白い飛行機雲が、線を描く。
時間が流れていく。
「今度、海に行こうぜ」
同じように空を見ていた黒尾がポツリと言った。
月島は視線を窓枠から黒尾へと移した。
「一緒に」
「いやです」
反射的に応えた声は、がらがらに掠れて酷いものだった。
それでも言葉は届いただろう。
「なんで!」
黒尾の声を無視して、月島は目を閉じた。
スイカ割りとかバーベキューとか花火とか。
海でしかできないことしようぜ。
耳元で囁く雑音が聞き取れなくなっていく。
喉は痛いし、体は怠いし、全部が面倒くさい。
黒尾の声が徐々に聞こえなくなっていくと同時に、眠っているベッドがゆらゆらと揺れたような気がした。
それは、まるで、海に浮かんだボートの上にいるようだった。
青い空と飛行機雲。
砂浜でスイカ割りをしたがる黒尾の影が見えたのは、気のせいに違いない。
そんな夢を見たような気がした。
終わり
なぁ。
雲ひとつない青空が、窓枠に切り取られている。
まるで、フォトフレームのようだと月島は仰向けに寝転がった状態でそれを見ていた。
なぁ。
少し遠くて聞こえる甘い声に、返事をするのも億劫で無視を決め込んだのが悪かったのか。
視線の先を遮るように顔を覗き込まれた。
なんですか?
面倒くさくて、瞬きで問いかける。
通じているのかはわからないけれど、とりあえず、声を出したくなかった。
きっと、かすれていてろくに話せないのだ。
それくらい、さっきまで、喘がされていた。
ペットボトルの水を飲んだけれど、喉はからからに渇いているような気がした。
「さっきから、何を見てんだよ」
黒尾はちゅっと月島のこめかみにキスをして、その隣りに寝転んだ。
狭い。暑苦しい。
そんな風に思ったけれど押しのけるのも怠い。
話すことさえままならないのだから、どうしようもない。
全部を諦めて、月島は再び窓枠から見える切り取られた青空を眺めた。
鳥の影が横切ったように見えた。
雲もなく、ただ、青だけがそこに在ると思っていたのだけれど、窓の外は静止画ではなかった。
理解していたようで、していなかった自分に少しだけ驚く。
腕も足も腰も重い。
自分の体じゃないみたいに、指先ひとつ動かすのもしんどかった。
半分は求めた自分のせいだし、もう半分は箍がはずれてしまった黒尾のせいだ。
休日の、こんなに天気の良い昼間から。
動けなくなるほどに、求め、求められ、体を重ねた。
「目に、空が映って、キレイだな」
ふ、と、笑う気配が耳元に届く。
ああ、そうだ、しゃべられないんだった。
そんなはずはないのだけれど。
瞬きを何度か繰り返しているうちに、青空を分断する白い線が窓枠の端からすうっとのびてきた。
斜めに、真っ直ぐ、空は二つに分かれた。
白い白い飛行機雲が、線を描く。
時間が流れていく。
「今度、海に行こうぜ」
同じように空を見ていた黒尾がポツリと言った。
月島は視線を窓枠から黒尾へと移した。
「一緒に」
「いやです」
反射的に応えた声は、がらがらに掠れて酷いものだった。
それでも言葉は届いただろう。
「なんで!」
黒尾の声を無視して、月島は目を閉じた。
スイカ割りとかバーベキューとか花火とか。
海でしかできないことしようぜ。
耳元で囁く雑音が聞き取れなくなっていく。
喉は痛いし、体は怠いし、全部が面倒くさい。
黒尾の声が徐々に聞こえなくなっていくと同時に、眠っているベッドがゆらゆらと揺れたような気がした。
それは、まるで、海に浮かんだボートの上にいるようだった。
青い空と飛行機雲。
砂浜でスイカ割りをしたがる黒尾の影が見えたのは、気のせいに違いない。
そんな夢を見たような気がした。
終わり
初出 2014-07-28 23:40:01 privatter
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