KTTK111のオフ活動のお知らせや短編置場、時々雑談。
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「遊び」「本気」「嘘塗れ」
携帯電話が鳴り続ける。
出たくなかった。
音を消すことができないくせに、電話には出られなかった。
電子音がずっと、延々と、鳴り響く。
耳を塞いでも聞こえるそれは、後悔の音か、懺悔の音か、はたまた希望の音か。
音が、黒尾の声に変換されて、脳内を巡った。
『電話、出ろよ』
聞きたくないよ。
ベッドの上でうずくまったまま、月島は目を閉じていた。
(遊び……だったんデショ)
甘い言葉も優しさも。
全部全部。
(何も知らない僕を騙すのは、さぞかし楽しかったでしょう?)
笑えてただろうか。
最後は。
いつものように、にっこりと、笑えてただろうか。
声は震えずに言えていただろうか。
目の前にいたはずの人がどんな表情をしていたのか、思い出せもしなかった。
気が付いた時にはすでに手遅れだった。
こうして枕を抱えているこの全身のほとんどが、すでに侵されて、いまだに意識は一人に集中してばかりいる。
途切れない着信音。
電池が、切れたら、終わる、だろうか。
泣いてはいない。
涙は出ない。
(本気、だったのかな?)
自分の気持ちさえ、疑ってしまう。
冷静ではない証拠だ。
感情的に怒り、悲しみ、苦しんでいる自分を客観的に見ている自分がいる。
そうして、冷静な自分は、電話に手を伸ばせと誘うのだ。
嫌だと首を横に振れば、電話の音はさらにボリュームをあげた。
そんなはずはない。
耳が、痛かった。
『好きだ』と言った。
『愛してる』と囁いた。
その眼差しも声音も全て、嘘濡れの世迷言だったのか。
(本当に?)
震える指先で携帯電話を掴んだ。
表示されている四文字。
(もっと簡単に嫌いになれたら、こんなに苦しまずに済んだのに)
溜息と共に気持ちも消えてなくなればいいのに。
まだ震えたままの指で、通話の二文字に触れた。
『好きだ。嘘じゃない。本当に好きなんだ』
怒鳴る声。
あまりの大声に反射的に携帯電話を投げ捨てた。
(……耳が、痛い)
よく聞こえないけれど、まだ、ずっと、何かを叫んでいるようだった。
一体どこにいるのか。
「……うるさいんですけど」
電話もあなたも。
『どうしたら、信じてくれんの?』
「嘘、だったんデショ?」
『まさか。お前に関しては全部本気だった。これからも』
「都合のいい遊び相手って言った」
『なんでそこだけ信じるんだよ』
「本気だから」
『……愛してんの、お前だけだよ、蛍』
「嫌いになりたいんだけど」
『おい』
「嫌いになれないの、責任とってよ」
『……任せろ』
本気と遊びの曖昧な境界線に惑わされながら、その言葉に嘘は無いと信じたかった。
終わり
携帯電話が鳴り続ける。
出たくなかった。
音を消すことができないくせに、電話には出られなかった。
電子音がずっと、延々と、鳴り響く。
耳を塞いでも聞こえるそれは、後悔の音か、懺悔の音か、はたまた希望の音か。
音が、黒尾の声に変換されて、脳内を巡った。
『電話、出ろよ』
聞きたくないよ。
ベッドの上でうずくまったまま、月島は目を閉じていた。
(遊び……だったんデショ)
甘い言葉も優しさも。
全部全部。
(何も知らない僕を騙すのは、さぞかし楽しかったでしょう?)
笑えてただろうか。
最後は。
いつものように、にっこりと、笑えてただろうか。
声は震えずに言えていただろうか。
目の前にいたはずの人がどんな表情をしていたのか、思い出せもしなかった。
気が付いた時にはすでに手遅れだった。
こうして枕を抱えているこの全身のほとんどが、すでに侵されて、いまだに意識は一人に集中してばかりいる。
途切れない着信音。
電池が、切れたら、終わる、だろうか。
泣いてはいない。
涙は出ない。
(本気、だったのかな?)
自分の気持ちさえ、疑ってしまう。
冷静ではない証拠だ。
感情的に怒り、悲しみ、苦しんでいる自分を客観的に見ている自分がいる。
そうして、冷静な自分は、電話に手を伸ばせと誘うのだ。
嫌だと首を横に振れば、電話の音はさらにボリュームをあげた。
そんなはずはない。
耳が、痛かった。
『好きだ』と言った。
『愛してる』と囁いた。
その眼差しも声音も全て、嘘濡れの世迷言だったのか。
(本当に?)
震える指先で携帯電話を掴んだ。
表示されている四文字。
(もっと簡単に嫌いになれたら、こんなに苦しまずに済んだのに)
溜息と共に気持ちも消えてなくなればいいのに。
まだ震えたままの指で、通話の二文字に触れた。
『好きだ。嘘じゃない。本当に好きなんだ』
怒鳴る声。
あまりの大声に反射的に携帯電話を投げ捨てた。
(……耳が、痛い)
よく聞こえないけれど、まだ、ずっと、何かを叫んでいるようだった。
一体どこにいるのか。
「……うるさいんですけど」
電話もあなたも。
『どうしたら、信じてくれんの?』
「嘘、だったんデショ?」
『まさか。お前に関しては全部本気だった。これからも』
「都合のいい遊び相手って言った」
『なんでそこだけ信じるんだよ』
「本気だから」
『……愛してんの、お前だけだよ、蛍』
「嫌いになりたいんだけど」
『おい』
「嫌いになれないの、責任とってよ」
『……任せろ』
本気と遊びの曖昧な境界線に惑わされながら、その言葉に嘘は無いと信じたかった。
終わり
初出 2014-07-17 20:12:25 privatter
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