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「遊び」「本気」「嘘塗れ」


携帯電話が鳴り続ける。
出たくなかった。
音を消すことができないくせに、電話には出られなかった。
電子音がずっと、延々と、鳴り響く。
耳を塞いでも聞こえるそれは、後悔の音か、懺悔の音か、はたまた希望の音か。
音が、黒尾の声に変換されて、脳内を巡った。
『電話、出ろよ』
聞きたくないよ。
ベッドの上でうずくまったまま、月島は目を閉じていた。
(遊び……だったんデショ)
甘い言葉も優しさも。
全部全部。
(何も知らない僕を騙すのは、さぞかし楽しかったでしょう?)
笑えてただろうか。
最後は。
いつものように、にっこりと、笑えてただろうか。
声は震えずに言えていただろうか。
目の前にいたはずの人がどんな表情をしていたのか、思い出せもしなかった。
気が付いた時にはすでに手遅れだった。
こうして枕を抱えているこの全身のほとんどが、すでに侵されて、いまだに意識は一人に集中してばかりいる。
途切れない着信音。
電池が、切れたら、終わる、だろうか。
泣いてはいない。
涙は出ない。
(本気、だったのかな?)
自分の気持ちさえ、疑ってしまう。
冷静ではない証拠だ。
感情的に怒り、悲しみ、苦しんでいる自分を客観的に見ている自分がいる。
そうして、冷静な自分は、電話に手を伸ばせと誘うのだ。
嫌だと首を横に振れば、電話の音はさらにボリュームをあげた。
そんなはずはない。
耳が、痛かった。
『好きだ』と言った。
『愛してる』と囁いた。
その眼差しも声音も全て、嘘濡れの世迷言だったのか。
(本当に?)
震える指先で携帯電話を掴んだ。
表示されている四文字。
(もっと簡単に嫌いになれたら、こんなに苦しまずに済んだのに)
溜息と共に気持ちも消えてなくなればいいのに。
まだ震えたままの指で、通話の二文字に触れた。
『好きだ。嘘じゃない。本当に好きなんだ』
怒鳴る声。
あまりの大声に反射的に携帯電話を投げ捨てた。
(……耳が、痛い)
よく聞こえないけれど、まだ、ずっと、何かを叫んでいるようだった。
一体どこにいるのか。
「……うるさいんですけど」
電話もあなたも。
『どうしたら、信じてくれんの?』
「嘘、だったんデショ?」
『まさか。お前に関しては全部本気だった。これからも』
「都合のいい遊び相手って言った」
『なんでそこだけ信じるんだよ』
「本気だから」
『……愛してんの、お前だけだよ、蛍』
「嫌いになりたいんだけど」
『おい』
「嫌いになれないの、責任とってよ」
『……任せろ』
本気と遊びの曖昧な境界線に惑わされながら、その言葉に嘘は無いと信じたかった。



終わり


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初出 2014-07-17 20:12:25 privatter
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