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KTTK111のオフ活動のお知らせや短編置場、時々雑談。
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「横顔」「防波堤」「夕焼け」


海が見たいと言ったから、二人で出かけた。
遠くに行けそうもなかったので、一番近い海へと向かう。
電車に揺られ、数十分。
乗換えを二回繰り返して、到着した頃には陽が沈む時刻だった。
それでも、生臭い潮の匂いは、波音と合わせて、日常から突然切り離す。
防波堤を歩けば、釣り人が釣竿を持ったまま海と向かい合っている。
「釣り、したことある?」
電車に乗っていたときもこうして海に辿り着いたあとも口数の少ない月島に黒尾は訊いた。
「あります」
子供の頃に、父親に連れられて、よく海に行きました。
釣り人の背中に少しだけ目を細める。
知らないことだらけだと思った。
それもそうだ。
まだ出会って3年も過ぎていない。
人間に合わせれば、よちよち歩き始めたばかりなのだ。
知らないことしかない。
そうであれば、これから知っていけばいい。
波の音、潮風、そして、沈む太陽。
夕焼けで赤く染まった雲が空を彩った。
世界が、海が、オレンジ色に変わる。
コンクリートの防波堤に波が当たって砕け散った。
穏やかな風。
立ち止まってみれば、その横顔も美しい夕焼け色に染まっていた。
「黒尾さん」
「んー?」
「黒尾さんってバカですよね」
「なに?こんなとこまできてケンカ売るつもり?」
「だって、僕の、たった一言で、こんなところまで来るんですよ?」
「あー、それはしかたないだろ?ツッキーバカだもん」
「もん…って、気持ち悪いです」
「うるせーよ」
「そんなツッキーバカの俺に誘われて、こんなところまで一緒にやってくるツッキーも相当バカだろ」
すぐ側にある頭をわしわしと片手で撫でて、笑う。
「バカとバカ。お似合いだろ」
「……一緒にされたくないですが、否定できませんね」
月島はそう言って笑った。
黒尾も一緒になって笑う。
普段、空を切り取るような建物の隙間で暮らしているからか、なにもない水平線が美しくも頼りなく感じる。
いつの間にか海へと沈む太陽が半分になっていた。
同じ速さで動いているはずだと言うのに、沈むときは空の上よりずっと速く見えた。
「ほら、ツッキー発見」
太陽とは反対の方向、夕焼け色と夜の色の境目に三日月が見えた。
「僕はここにいますけど」
「俺はこっちのツッキーが好き」
その手をぎゅっと繋いで、黒尾が振り返ると赤く染まった月島がそこにいた。
「照れた?嬉しい?」
「照れてません」
「顔赤いし」
「夕焼けのせいデショ」
素直じゃない人はそうと言い張って、ぷいっと顔を逸らした。
その横顔に黒尾はちゅっとキスをした。


終わり

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初出 2014-09-30 19:46:19 privatter
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