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KTTK111のオフ活動のお知らせや短編置場、時々雑談。
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バレーボールの写真が届いた。
もう駄目だなと思った。
聡い人は、いつだってこちらの意図を難なく読みとってしまう。
それが、故意でなくとも。
使い古された傷と汚れだらけのバレーボールは、きっと練習後に撮ったものなのだろう。
同じものであり、異なるものだ。
(共通しているのは、バレーボールだけだ)
どうして、僕が、ひまわりと教科書とバレーボールの写真を送ったのか、わかっていますか?
実際にその理由を問われたとしても答えはしない。
水道の蛇口、青空、欅の枝、足元の影、手のひら。
暗号のように届いた写真に答えがないのと同じだからだ。
ただ、勝手に、同じものをシンクロさせただけだ。
自分が。
自分の脳が。
視覚からの情報はダイレクトに脳へと伝達され、そのまま膨大な情報から、似て異なるものを瞬時に導き出す。
知らないふりをしていたい。
知らないままでいたい。
考えたくない。
そう思っていることをあなたは知らない。
(ほら、また……)
気がつけば黒尾のことばかり考えている。
その時間が日々増えていく。
(すぐに、会えない、ことに、耐えられない……かもしれない……)
経験の無いことを考えても仕方がない。
それでも。
声も熱も顔も。
まだ、覚えていることに安堵する。
携帯電話を手にして、何度も見たメールをまた確認する。
黄色の花の写真。
烏野高校の花壇にも同じ花が咲いているのを知っていた。
ガザニアという花だ。
黄色の鮮やかな花びらがひまわりのようだった。
次に届いた教科書の写真。
東京に限らず、学校が変われば教科書も変わる。
見たこともない表紙の柄に中身まで気になってしまう。
思いのほか雑に扱われている様子が見てわかった。
(きっと、机かロッカーに入れっぱなし……)
そうして、些細なことを想像し、苦笑する自分がいる。
認めたくなかった。
自分がそれを認めてしまったら、きっと、我慢できなくなるかもしれない。
溜息を一つ。
ヘッドホンから流れる好きな音楽に耳を傾け、ゆっくりと瞬きをした。
それから空を見上げた。
先日見た、細く欠けていた月が満ちている。
あの日から、何日も過ぎていた。
目まぐるしい日々の忙しさに、忘れられたらもっと楽になれただろうにと思わずにいられない。
一行だけ、メールを送る。
『空、見てますか?』




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初出 2014-07-17 15:16:32 プライベッター
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