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「愛」「嘘」「指先」


熱を持った指先を舌で触れ、そっと舐めればほんの少しだけ震える。
平気な顔でそれを見ている人の動揺に満足をして、さらに指先を咥え吸うように唇を尖らせた。
再びひくりと震える。
敏感な指先は、骨ばっているけれど、厚い皮膚で覆われて硬くなっていた。
バレーボールをする人の指だ。
舐めたところで味などしない。
ただ、ちょっとだけ、困らせてみたかった。
「喜んだだけだろ」
唾液で濡れた指先をちゅっと自分でキスをしてそれからテッシュでふき取った。
「どうした?」
形だけの問いに答える理由もない。
ソファに座る人の固い膝に頭をのせて、目を閉じた。
「ツッキー?」
世の中には嘘ばかりだ。
騙されないように注意深く意識をしてもそれは巧妙に隠され、見抜くことができない。
今日もまたひとつ、信じようとしたものが消えた。
まだ、傷は浅い。
ふわりと後頭部に指先が触れる感覚があった。
少しくすぐったくて、肩を竦める。
心配されるのが、嬉しい。
それを悪いとも思わないから、安心ができる。
言わないけれど、ちゃんと、そこに愛はあると、思う。
たぶん。
自信がないのは、不確かな感情を形にできないからだ。
見えないものを信じるのは難しい。
それは、嘘も同じだ。
見えないから、疑う。
嘘も愛も紙一重。
信じられるとしたら、触れ合って、その熱を確かめられる指先だけだ。
「黒尾さん」
呼ぶ。
それだけで、黒く染まった心が少しだけ浄化されるようだった。
返事のかわりに額に触れる唇の感触。
わがままも甘えも全部許してくれる、酷い人。
だから、きっと、信じられるのかもしれない。
指先の熱がとけあって同じになればいいのにと、思った。


終わり


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初出 2014-09-30 20:45:00 pixiv
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