KTTK111のオフ活動のお知らせや短編置場、時々雑談。
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「好きな人の好きなところ三箇所にキスしてください」
白い封筒に入った白いカードに黒い文字で印字されたそれを読み上げた瞬間、月島は酷く嫌そうな顔をした。
眉間の皺は深い。
「どうする?」
口元を楽しそうに歪めて黒尾が笑う。
きっと、月島が面倒くさいと思っていることを面白がっているのだろう。
月島はそんな黒尾に対して目を伏せると溜息を一つ。
「意にそぐわないことを指示されるのはとても腹が立ちますね」
それでも、と、月島は正面にいる黒尾へ一歩近づいて、人より少し尖った耳に噛みつくように唇で触れた。
「え?」
そのまま驚く黒尾の瞼にそっと唇を落とし、右手を掴んで引き寄せるとその手のひらにちゅとキスをした。
「理由も言いましょうか?」
指示通りにキスをするとは思ってもいなかったのか、黒尾はその鋭い目をまん丸に見開いて月島を見ている。
そんな黒尾に月島はにっこりと人が良さそうな笑顔を作りあげた。
笑顔はとても有効な手段である。
にこにこと笑っておけば、面倒なことからほとんど回避できるからだ。
もちろん、黒尾にはそれが通用しないことはわかっている。
だからこそ、あえて、笑顔を作ってみせることで、本音を曖昧に濁すのだ。
「僕の声を聞く耳、僕を見る目、そして……」
どんなスパイクに対しても鮮やかにブロックを決めるその手のひらを最初から見ていた。
バレーボールの、守備に関しては、武田先生の言葉を引用するのであれば、間違いなく師である。
それから幾度となく練習試合を繰り返し、悔しいけれど、敵わなかったのだから仕方がない。
その強さの象徴である手のひら。
そこにあるのは、強さだけでなく優しさもある。
「まあ、好きです」
「……月島君?」
「はい」
「今、いろんなのを省略したでしょ?」
「言葉にする理由が見当たらなかったので」
「確かに俺の事が好きだっていうのはわかった」
ぽすんっと、肩口に黒尾の額が乗ってきた。
微かな温かさと重さを感じると同時に首筋に触れる髪がくすぐったいと月島は思った。
「黒尾さん?」
「俺も好きだ」
不意を突かれて、唇が重なる。
柔らかな感触の後、酷く熱をもった。
思わず目を閉じてしまった月島の額に、唇の触れた熱が残る。
そっと手を握られて指と指を絡められると、その指先まで熱い。
黒尾に触れられるたびに、じわじわと外皮だけでなく内部まで痛くなるような熱がうまれるようだった。
「蛍」
時折、呼ばれる名前に心臓が跳ねる。
そっと目を開けると繋いだ手を持ち上げられて、その手首へ啄ばむようなキスをされた。
目の前の獣のような鋭い目をまともに見てしまえば、背筋にひやりと冷たい汗が流れ落ちる感覚が響く。
逃げることも叶わずに、捕食されてしまうのは、こんな時だ。
「……、伝わった?」
「なに、が?」
動揺を悟られないように答えたつもりだったけれど、どうしても声が震えてしまう。
こんなに近くにいるのであれば、きっとこの激しい心臓の音も聞こえてしまっているに違いない。
月島はどうしようもないまま、黒尾から目をそらせずにいた。
「三ヶ所に決められないくらい、全部好き」
ぎゅっと頭を抱え込むように抱き締められて、月島は漸く息を吐いた。
手首から生まれた熱はすでに全身へと伝わっている。
(ああ、そうか……)
そこで、やっと、理解した。
熱さの意味と理由を。
終わり
白い封筒に入った白いカードに黒い文字で印字されたそれを読み上げた瞬間、月島は酷く嫌そうな顔をした。
眉間の皺は深い。
「どうする?」
口元を楽しそうに歪めて黒尾が笑う。
きっと、月島が面倒くさいと思っていることを面白がっているのだろう。
月島はそんな黒尾に対して目を伏せると溜息を一つ。
「意にそぐわないことを指示されるのはとても腹が立ちますね」
それでも、と、月島は正面にいる黒尾へ一歩近づいて、人より少し尖った耳に噛みつくように唇で触れた。
「え?」
そのまま驚く黒尾の瞼にそっと唇を落とし、右手を掴んで引き寄せるとその手のひらにちゅとキスをした。
「理由も言いましょうか?」
指示通りにキスをするとは思ってもいなかったのか、黒尾はその鋭い目をまん丸に見開いて月島を見ている。
そんな黒尾に月島はにっこりと人が良さそうな笑顔を作りあげた。
笑顔はとても有効な手段である。
にこにこと笑っておけば、面倒なことからほとんど回避できるからだ。
もちろん、黒尾にはそれが通用しないことはわかっている。
だからこそ、あえて、笑顔を作ってみせることで、本音を曖昧に濁すのだ。
「僕の声を聞く耳、僕を見る目、そして……」
どんなスパイクに対しても鮮やかにブロックを決めるその手のひらを最初から見ていた。
バレーボールの、守備に関しては、武田先生の言葉を引用するのであれば、間違いなく師である。
それから幾度となく練習試合を繰り返し、悔しいけれど、敵わなかったのだから仕方がない。
その強さの象徴である手のひら。
そこにあるのは、強さだけでなく優しさもある。
「まあ、好きです」
「……月島君?」
「はい」
「今、いろんなのを省略したでしょ?」
「言葉にする理由が見当たらなかったので」
「確かに俺の事が好きだっていうのはわかった」
ぽすんっと、肩口に黒尾の額が乗ってきた。
微かな温かさと重さを感じると同時に首筋に触れる髪がくすぐったいと月島は思った。
「黒尾さん?」
「俺も好きだ」
不意を突かれて、唇が重なる。
柔らかな感触の後、酷く熱をもった。
思わず目を閉じてしまった月島の額に、唇の触れた熱が残る。
そっと手を握られて指と指を絡められると、その指先まで熱い。
黒尾に触れられるたびに、じわじわと外皮だけでなく内部まで痛くなるような熱がうまれるようだった。
「蛍」
時折、呼ばれる名前に心臓が跳ねる。
そっと目を開けると繋いだ手を持ち上げられて、その手首へ啄ばむようなキスをされた。
目の前の獣のような鋭い目をまともに見てしまえば、背筋にひやりと冷たい汗が流れ落ちる感覚が響く。
逃げることも叶わずに、捕食されてしまうのは、こんな時だ。
「……、伝わった?」
「なに、が?」
動揺を悟られないように答えたつもりだったけれど、どうしても声が震えてしまう。
こんなに近くにいるのであれば、きっとこの激しい心臓の音も聞こえてしまっているに違いない。
月島はどうしようもないまま、黒尾から目をそらせずにいた。
「三ヶ所に決められないくらい、全部好き」
ぎゅっと頭を抱え込むように抱き締められて、月島は漸く息を吐いた。
手首から生まれた熱はすでに全身へと伝わっている。
(ああ、そうか……)
そこで、やっと、理解した。
熱さの意味と理由を。
終わり
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