KTTK111のオフ活動のお知らせや短編置場、時々雑談。
×
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
人を観察するのは嫌いじゃない。
耳を澄ますのも悪くない。
いろいろな情報を入れて、脳の活性化に役立てばいい。
研磨ほど洞察力に優れているわけではないけど、勘は良い方だと思ってる。
相手によって挑発する方法は異なるけれど、失敗したのは久しぶりだった。
一筋縄ではいかないだけなのか、単純な判断ミスか。
どちらにせよ、簡単ではない事はわかっている。
「ね、メガネ君」
合宿の中盤。
自主練のブロックに付き合わせることに成功してから、ちゃんと見るようになった。
きっかけは、怒らせた(かもしれない)ことだったけれど、実際はそうでもなかった。
教えれば、ちゃんと学ぶ。
言えば、ちゃんと聞く。
飄々として、淡々として、最初に会った時から印象はたいして変わらない。
熱くもなく、むしろ冷めすぎている。
研磨くらい割り切っていればいいのだけれど、そうでもない。
運動部特有の上下関係には慣れているし、自分がどうすれば回避できるかを熟知している賢さは、判断力にも繋がっている。
足りないものは……。
たくさんあるね。
「は?…い?」
主語の欠落した同意を得る為の呼びかけに戸惑いの色を見せる。
意外と表情が豊かなのだと知ってから、いろいろと仕掛けてしまう。
隣りに並んで立てば視線は同じくらい。
高校一年生らしい未発達のひょろひょろとした体型は、その食事を見ればよくわかる。
興味がないのだ。
食べることに。
(本当は、知っているクセに)
知識としては理解しているだろうけれど、意識がそこに追い付いていない。
「ちゃんと食べないと細いまんまだよ」
腕を伸ばして見せれば、たぶん1.5倍くらいはある。
これは、2年の経験と積み重ねの差……だけじゃあ、ない。
「……、食べてます」
メガネの奥の目がゆらゆらとする。
灯る炎は酷く弱々しいけれど、点火するだけで十分だ。
燃料など後からいくらでも追加できる。
(負けず嫌い……)
にこにこと笑って見せれば、眉間に皺を寄せて、あからさまに嫌な顔をする。
思う通りの反応をするのも予想外の反応をするのも、おもしろい。
掠めて行くように通り過ぎた感情の裾が目の端に止まった気がした。
(ん?)
拗ねたような横顔をマジマジと見ていたら、強く睨まれる。
「なんですか?」
「なんでしょう?」
「聞いているのは僕なんですけど」
「そうだね」
わけがわからないとでも言いたげな目は、本人の言葉よりもずっと素直だ。
こちらの様子を警戒しながら伺っているのに、あっさりと隙を見せてくる。
だから、付け込まれるよ。
俺みたいなヤツに。
色白い肌に噛みついたら、真っ赤になるだろうなと、その首筋に流れる汗に爪を立てたくなってしまう。
(しないけど)
平気な顔をして、本当は何を考えている?
「あ、あーーっ!!!!」
叫び声と共に木兎のスパイクがネットの支柱に当たった。
狙ったかのようにこちらを目指して飛んでくるボールを片手で弾いた。
さすがに勢いを増したボールは手のひらでも衝撃と痛みが響く。
触れ掛けた思考の隅がするりと消えてなくなった。
(あーあ……)
残念に思いつつ、まだ知らなくていい事だったのかもしれないと、思い直す。
目の前では、少し間違えば怪我にもつながりかねないそれに、木兎が勢いよく頭を下げている。
「なになに?新しい技?」
バレーボールにそーゆーミスは多いし、確かにびっくりはしたけれど、たいしたことじゃない。
横を見れば平気な顔で額の汗を拭いているから、問題はどこにもない。
「狙って打ったなら、さすがですね」
ほら。ね。
簡単にのっかってくるから、頭の回転が早い。
「……、ぐっ。お前ら、休憩はもう終わりだ!さっさとブロック跳べ!」
やかましい梟が騒ぎ出した。
小さな溜息が聞こえた。
それでも、すぐに帰りたがった最初の頃と違って、ちゃんとコートへと向かう。
(……子猫、かな?)
少しずつ世界を知って成長していくその過程を見ることができる楽しさ。
おもしろい、と、思ってしまった。
それが、きっかけでいい。
ひょろっとしているけれど真っ直ぐに伸びた背中を眺めていたら、いろいろかまいたくなってしまう。
(悪くない)
いつか脅威になるほどに成長した姿を想像して、笑った。
終わり
耳を澄ますのも悪くない。
いろいろな情報を入れて、脳の活性化に役立てばいい。
研磨ほど洞察力に優れているわけではないけど、勘は良い方だと思ってる。
相手によって挑発する方法は異なるけれど、失敗したのは久しぶりだった。
一筋縄ではいかないだけなのか、単純な判断ミスか。
どちらにせよ、簡単ではない事はわかっている。
「ね、メガネ君」
合宿の中盤。
自主練のブロックに付き合わせることに成功してから、ちゃんと見るようになった。
きっかけは、怒らせた(かもしれない)ことだったけれど、実際はそうでもなかった。
教えれば、ちゃんと学ぶ。
言えば、ちゃんと聞く。
飄々として、淡々として、最初に会った時から印象はたいして変わらない。
熱くもなく、むしろ冷めすぎている。
研磨くらい割り切っていればいいのだけれど、そうでもない。
運動部特有の上下関係には慣れているし、自分がどうすれば回避できるかを熟知している賢さは、判断力にも繋がっている。
足りないものは……。
たくさんあるね。
「は?…い?」
主語の欠落した同意を得る為の呼びかけに戸惑いの色を見せる。
意外と表情が豊かなのだと知ってから、いろいろと仕掛けてしまう。
隣りに並んで立てば視線は同じくらい。
高校一年生らしい未発達のひょろひょろとした体型は、その食事を見ればよくわかる。
興味がないのだ。
食べることに。
(本当は、知っているクセに)
知識としては理解しているだろうけれど、意識がそこに追い付いていない。
「ちゃんと食べないと細いまんまだよ」
腕を伸ばして見せれば、たぶん1.5倍くらいはある。
これは、2年の経験と積み重ねの差……だけじゃあ、ない。
「……、食べてます」
メガネの奥の目がゆらゆらとする。
灯る炎は酷く弱々しいけれど、点火するだけで十分だ。
燃料など後からいくらでも追加できる。
(負けず嫌い……)
にこにこと笑って見せれば、眉間に皺を寄せて、あからさまに嫌な顔をする。
思う通りの反応をするのも予想外の反応をするのも、おもしろい。
掠めて行くように通り過ぎた感情の裾が目の端に止まった気がした。
(ん?)
拗ねたような横顔をマジマジと見ていたら、強く睨まれる。
「なんですか?」
「なんでしょう?」
「聞いているのは僕なんですけど」
「そうだね」
わけがわからないとでも言いたげな目は、本人の言葉よりもずっと素直だ。
こちらの様子を警戒しながら伺っているのに、あっさりと隙を見せてくる。
だから、付け込まれるよ。
俺みたいなヤツに。
色白い肌に噛みついたら、真っ赤になるだろうなと、その首筋に流れる汗に爪を立てたくなってしまう。
(しないけど)
平気な顔をして、本当は何を考えている?
「あ、あーーっ!!!!」
叫び声と共に木兎のスパイクがネットの支柱に当たった。
狙ったかのようにこちらを目指して飛んでくるボールを片手で弾いた。
さすがに勢いを増したボールは手のひらでも衝撃と痛みが響く。
触れ掛けた思考の隅がするりと消えてなくなった。
(あーあ……)
残念に思いつつ、まだ知らなくていい事だったのかもしれないと、思い直す。
目の前では、少し間違えば怪我にもつながりかねないそれに、木兎が勢いよく頭を下げている。
「なになに?新しい技?」
バレーボールにそーゆーミスは多いし、確かにびっくりはしたけれど、たいしたことじゃない。
横を見れば平気な顔で額の汗を拭いているから、問題はどこにもない。
「狙って打ったなら、さすがですね」
ほら。ね。
簡単にのっかってくるから、頭の回転が早い。
「……、ぐっ。お前ら、休憩はもう終わりだ!さっさとブロック跳べ!」
やかましい梟が騒ぎ出した。
小さな溜息が聞こえた。
それでも、すぐに帰りたがった最初の頃と違って、ちゃんとコートへと向かう。
(……子猫、かな?)
少しずつ世界を知って成長していくその過程を見ることができる楽しさ。
おもしろい、と、思ってしまった。
それが、きっかけでいい。
ひょろっとしているけれど真っ直ぐに伸びた背中を眺めていたら、いろいろかまいたくなってしまう。
(悪くない)
いつか脅威になるほどに成長した姿を想像して、笑った。
終わり
この記事にコメントする
カレンダー
カテゴリー
プロフィール
HN:
香月珈異
性別:
女性
最新記事
(01/11)
(12/31)
(12/31)
(01/12)
(01/08)
(12/31)
(12/30)
(03/20)
(01/06)
(12/31)
(12/25)
(06/25)
(06/25)
(01/03)
(12/31)
ブログ内検索
忍者カウンター