KTTK111のオフ活動のお知らせや短編置場、時々雑談。
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「衝動」「茫然/呆然」「地面」
掴まれた手首が熱い。
指先が、手のひらが、体温以上に熱を持っているような気がした。
そんなことは、ありえないと言うのに。
触れた唇は思いのほか冷たくて、慣れていないからか、重なっただけで終わった。
目を閉じることなどできなかった。
瞬きを忘れるくらい間近になったその目を見ていた。
ただ、呆然としていた。
黒い瞳の中に目を見開いた自分の姿が映る。
「……か、らかって、いるんですか?」
熱と目とそれから沈黙に耐え切れなくて、先に言葉を発した。
熱い。
手首も頬も首筋も耳も、全て。
ぐらぐらと煮立っていくようで、地面が揺れているように思えた。
殴りたい衝動は手首を掴まれていることによって阻止され、見据えられた黒曜石に捕らわれて、目を逸らすことすら許されない。
「まさか」
口の端を歪め、それから、一言で否定する。
逃げられないと、警鐘が鳴り響く。
「怖い?」
逆に問われれば、怖くないと答える。
怖くは無い。
嘘じゃなかった。
ただ、熱い。
理由もわからない。
触れた唇の感触は覚えていなかった。
ただ、冷たい。
それだけが残っていた。
その衝動に耐え切れず、呆然とした意識が踏みしめた地面は、まるで頼りなかった。
もう一度、唇を塞がれた。
啄ばむように何度も繰り返される。
閉じられた目を見つめれば、睫毛が揺れた。
「目、閉じろよ」
見ていることに気付いた黒尾が勝手なことを言う。
「嫌です」
断れば、ふ、と笑われる。
「お前の目に映る俺は嫌いじゃないけどな」
これ以上近づけないくらいの距離で。
見つめ合ったお互いの目の中にいる自分は、本当に自分なのだろうか。
「僕は嫌いです」
「素直」
楽しそうに笑いながら、鼻先に頬に唇を落として、再び触れた唇は、少しだけ熱をもっていた。
終わり
掴まれた手首が熱い。
指先が、手のひらが、体温以上に熱を持っているような気がした。
そんなことは、ありえないと言うのに。
触れた唇は思いのほか冷たくて、慣れていないからか、重なっただけで終わった。
目を閉じることなどできなかった。
瞬きを忘れるくらい間近になったその目を見ていた。
ただ、呆然としていた。
黒い瞳の中に目を見開いた自分の姿が映る。
「……か、らかって、いるんですか?」
熱と目とそれから沈黙に耐え切れなくて、先に言葉を発した。
熱い。
手首も頬も首筋も耳も、全て。
ぐらぐらと煮立っていくようで、地面が揺れているように思えた。
殴りたい衝動は手首を掴まれていることによって阻止され、見据えられた黒曜石に捕らわれて、目を逸らすことすら許されない。
「まさか」
口の端を歪め、それから、一言で否定する。
逃げられないと、警鐘が鳴り響く。
「怖い?」
逆に問われれば、怖くないと答える。
怖くは無い。
嘘じゃなかった。
ただ、熱い。
理由もわからない。
触れた唇の感触は覚えていなかった。
ただ、冷たい。
それだけが残っていた。
その衝動に耐え切れず、呆然とした意識が踏みしめた地面は、まるで頼りなかった。
もう一度、唇を塞がれた。
啄ばむように何度も繰り返される。
閉じられた目を見つめれば、睫毛が揺れた。
「目、閉じろよ」
見ていることに気付いた黒尾が勝手なことを言う。
「嫌です」
断れば、ふ、と笑われる。
「お前の目に映る俺は嫌いじゃないけどな」
これ以上近づけないくらいの距離で。
見つめ合ったお互いの目の中にいる自分は、本当に自分なのだろうか。
「僕は嫌いです」
「素直」
楽しそうに笑いながら、鼻先に頬に唇を落として、再び触れた唇は、少しだけ熱をもっていた。
終わり
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「靴」「傘」「寄り道」
天気予報は時折あてにならない。
太陽がかんかんと照らして、気温を上昇させている間に、真っ白な入道雲はどんどん大きくなって、あっという間にその色を変えてしまう。
太陽を隠し、雷を呼び、そうして、とどめとばかりにバケツをひっくり返したどころか、蛇口を全開にしたシャワーのような雨を降らすのだ。
これは、まずいと思った時には、すでに遅かった。
頭から靴の中までびしょ濡れになる。
(さて。どうしようか)
こんなことなら真っ直ぐ帰ればよかった。
寄り道なんかしている場合じゃなかった。
店を出てすぐに雨が降り出した。
慌てて最寄駅へと走ったのだが、どうにもならずに、この様である。
電話をすれば、きっと、もう手遅れですよとあっさり言われそうな気がした。
確かに、Tシャツは濡れてべっとりと身体に張り付いているし、ジーンズは水を吸って随分と重たくなっている。
それでも。
それでも、だ。
空を見上げれば、どうにも雨はやみそうにない。
「黒尾さん?」
紺色の傘が、目の前で立ち止まる。
行き交う人の傘は大抵目線の下にあるというのに、その人は自分と同じ背丈である。
「ツッキー!」
どうしてここに?というのは、愚問だった。
同じ部屋に暮らしている月島とは、帰り道は一緒なのだ。
「だから、傘を、持っていけと、言いましたよね。僕」
上から下までびしょ濡れ姿を眺めて、月島は冷めたい目で黒尾を見下ろした。
先に部屋を出たのは黒尾だった。
確かにそれを背中で聞いたような気がする。
「そこまで濡れてたら、傘なんて意味無いんじゃないですか?」
楽しそうに笑った月島はそのまま歩き出そうとしたので、黒尾は慌てて引き止めた。
「い、一緒に帰ろーぜ」
「嫌です」
「なんで!」
「自分がどんな姿をしているのか、知ってます?」
「傘、入れてよ」
眉間の皺がさらに深くなっていく。
月島は鏡のような部分がある。
怒りをぶつければ怒りを。
優しさを与えれば優しさを。
それぞれ返してくる。
「傘なんて、必要ないみたいですけど」
溜息を零しながら、ほんの少しだけ持っていた傘を傾けてくれた。
「ツッキーと相合傘!」
ひょいっとその下に入って、追い出されないように月島の手ごと傘の柄を掴んだ。
「ちょっと!」
「皆、自分のことしか見えてないから」
雨の中、他人を気にする人はいない。
ふと、足元を見れば、月島の靴は色が変わるほど濡れていた。
よく見れば眼鏡も濡れている。
傘をさして歩いているだけであれば、こんなに濡れることもないだろう。
「ツッキーは、なんで駅にいんの?今日休みだっただろ」
「……、買い物があったので」
「いつもは俺に電話かメールしてくるのに?わざわざ、自分で?」
「……傘、いらないみたいですね」
「いる。ツッキーごと傘、欲しい」
ぷいっと顔をそらした月島から本当に突き放されるのは困ると、黒尾はぎゅうっと握る手に力を入れた。
「痛いんですけど」
「ツッキー愛してる」
「バカですか」
「そこは、僕もですって返してくれるところだろ?」
「傘ごと捨てますよ?」
「あ、待って、待て。早まるな」
空いている方の手で本気で殴られそうになる。
「今日さ、思ったより早く帰ってこれたからさ。駅前のケーキ屋の、限定のやつ、買えたから」
「……それのせいで雨に降られたんですか?」
「ご名答」
「本当にバカじゃないの」
「おかげでツッキーに迎えに来てもらえたし、相合傘もできたし、俺は幸せですけど?」
へらっと笑って月島の顔を覗き込めば、少し照れたように目を逸らす。
もっと素直になってくれてもいいのにと思うけれど、仕方が無い。
「この豪雨の中、ケーキの箱だけは死守したから褒めて?」
「……、コーヒーは僕がいれますよ」
諦めたように苦笑した月島に黒尾はつられたように笑った。
雨は、いつの間にか小降りになっていた。
終わり
天気予報は時折あてにならない。
太陽がかんかんと照らして、気温を上昇させている間に、真っ白な入道雲はどんどん大きくなって、あっという間にその色を変えてしまう。
太陽を隠し、雷を呼び、そうして、とどめとばかりにバケツをひっくり返したどころか、蛇口を全開にしたシャワーのような雨を降らすのだ。
これは、まずいと思った時には、すでに遅かった。
頭から靴の中までびしょ濡れになる。
(さて。どうしようか)
こんなことなら真っ直ぐ帰ればよかった。
寄り道なんかしている場合じゃなかった。
店を出てすぐに雨が降り出した。
慌てて最寄駅へと走ったのだが、どうにもならずに、この様である。
電話をすれば、きっと、もう手遅れですよとあっさり言われそうな気がした。
確かに、Tシャツは濡れてべっとりと身体に張り付いているし、ジーンズは水を吸って随分と重たくなっている。
それでも。
それでも、だ。
空を見上げれば、どうにも雨はやみそうにない。
「黒尾さん?」
紺色の傘が、目の前で立ち止まる。
行き交う人の傘は大抵目線の下にあるというのに、その人は自分と同じ背丈である。
「ツッキー!」
どうしてここに?というのは、愚問だった。
同じ部屋に暮らしている月島とは、帰り道は一緒なのだ。
「だから、傘を、持っていけと、言いましたよね。僕」
上から下までびしょ濡れ姿を眺めて、月島は冷めたい目で黒尾を見下ろした。
先に部屋を出たのは黒尾だった。
確かにそれを背中で聞いたような気がする。
「そこまで濡れてたら、傘なんて意味無いんじゃないですか?」
楽しそうに笑った月島はそのまま歩き出そうとしたので、黒尾は慌てて引き止めた。
「い、一緒に帰ろーぜ」
「嫌です」
「なんで!」
「自分がどんな姿をしているのか、知ってます?」
「傘、入れてよ」
眉間の皺がさらに深くなっていく。
月島は鏡のような部分がある。
怒りをぶつければ怒りを。
優しさを与えれば優しさを。
それぞれ返してくる。
「傘なんて、必要ないみたいですけど」
溜息を零しながら、ほんの少しだけ持っていた傘を傾けてくれた。
「ツッキーと相合傘!」
ひょいっとその下に入って、追い出されないように月島の手ごと傘の柄を掴んだ。
「ちょっと!」
「皆、自分のことしか見えてないから」
雨の中、他人を気にする人はいない。
ふと、足元を見れば、月島の靴は色が変わるほど濡れていた。
よく見れば眼鏡も濡れている。
傘をさして歩いているだけであれば、こんなに濡れることもないだろう。
「ツッキーは、なんで駅にいんの?今日休みだっただろ」
「……、買い物があったので」
「いつもは俺に電話かメールしてくるのに?わざわざ、自分で?」
「……傘、いらないみたいですね」
「いる。ツッキーごと傘、欲しい」
ぷいっと顔をそらした月島から本当に突き放されるのは困ると、黒尾はぎゅうっと握る手に力を入れた。
「痛いんですけど」
「ツッキー愛してる」
「バカですか」
「そこは、僕もですって返してくれるところだろ?」
「傘ごと捨てますよ?」
「あ、待って、待て。早まるな」
空いている方の手で本気で殴られそうになる。
「今日さ、思ったより早く帰ってこれたからさ。駅前のケーキ屋の、限定のやつ、買えたから」
「……それのせいで雨に降られたんですか?」
「ご名答」
「本当にバカじゃないの」
「おかげでツッキーに迎えに来てもらえたし、相合傘もできたし、俺は幸せですけど?」
へらっと笑って月島の顔を覗き込めば、少し照れたように目を逸らす。
もっと素直になってくれてもいいのにと思うけれど、仕方が無い。
「この豪雨の中、ケーキの箱だけは死守したから褒めて?」
「……、コーヒーは僕がいれますよ」
諦めたように苦笑した月島に黒尾はつられたように笑った。
雨は、いつの間にか小降りになっていた。
終わり
「遊び」「本気」「嘘塗れ」
携帯電話が鳴り続ける。
出たくなかった。
音を消すことができないくせに、電話には出られなかった。
電子音がずっと、延々と、鳴り響く。
耳を塞いでも聞こえるそれは、後悔の音か、懺悔の音か、はたまた希望の音か。
音が、黒尾の声に変換されて、脳内を巡った。
『電話、出ろよ』
聞きたくないよ。
ベッドの上でうずくまったまま、月島は目を閉じていた。
(遊び……だったんデショ)
甘い言葉も優しさも。
全部全部。
(何も知らない僕を騙すのは、さぞかし楽しかったでしょう?)
笑えてただろうか。
最後は。
いつものように、にっこりと、笑えてただろうか。
声は震えずに言えていただろうか。
目の前にいたはずの人がどんな表情をしていたのか、思い出せもしなかった。
気が付いた時にはすでに手遅れだった。
こうして枕を抱えているこの全身のほとんどが、すでに侵されて、いまだに意識は一人に集中してばかりいる。
途切れない着信音。
電池が、切れたら、終わる、だろうか。
泣いてはいない。
涙は出ない。
(本気、だったのかな?)
自分の気持ちさえ、疑ってしまう。
冷静ではない証拠だ。
感情的に怒り、悲しみ、苦しんでいる自分を客観的に見ている自分がいる。
そうして、冷静な自分は、電話に手を伸ばせと誘うのだ。
嫌だと首を横に振れば、電話の音はさらにボリュームをあげた。
そんなはずはない。
耳が、痛かった。
『好きだ』と言った。
『愛してる』と囁いた。
その眼差しも声音も全て、嘘濡れの世迷言だったのか。
(本当に?)
震える指先で携帯電話を掴んだ。
表示されている四文字。
(もっと簡単に嫌いになれたら、こんなに苦しまずに済んだのに)
溜息と共に気持ちも消えてなくなればいいのに。
まだ震えたままの指で、通話の二文字に触れた。
『好きだ。嘘じゃない。本当に好きなんだ』
怒鳴る声。
あまりの大声に反射的に携帯電話を投げ捨てた。
(……耳が、痛い)
よく聞こえないけれど、まだ、ずっと、何かを叫んでいるようだった。
一体どこにいるのか。
「……うるさいんですけど」
電話もあなたも。
『どうしたら、信じてくれんの?』
「嘘、だったんデショ?」
『まさか。お前に関しては全部本気だった。これからも』
「都合のいい遊び相手って言った」
『なんでそこだけ信じるんだよ』
「本気だから」
『……愛してんの、お前だけだよ、蛍』
「嫌いになりたいんだけど」
『おい』
「嫌いになれないの、責任とってよ」
『……任せろ』
本気と遊びの曖昧な境界線に惑わされながら、その言葉に嘘は無いと信じたかった。
終わり
携帯電話が鳴り続ける。
出たくなかった。
音を消すことができないくせに、電話には出られなかった。
電子音がずっと、延々と、鳴り響く。
耳を塞いでも聞こえるそれは、後悔の音か、懺悔の音か、はたまた希望の音か。
音が、黒尾の声に変換されて、脳内を巡った。
『電話、出ろよ』
聞きたくないよ。
ベッドの上でうずくまったまま、月島は目を閉じていた。
(遊び……だったんデショ)
甘い言葉も優しさも。
全部全部。
(何も知らない僕を騙すのは、さぞかし楽しかったでしょう?)
笑えてただろうか。
最後は。
いつものように、にっこりと、笑えてただろうか。
声は震えずに言えていただろうか。
目の前にいたはずの人がどんな表情をしていたのか、思い出せもしなかった。
気が付いた時にはすでに手遅れだった。
こうして枕を抱えているこの全身のほとんどが、すでに侵されて、いまだに意識は一人に集中してばかりいる。
途切れない着信音。
電池が、切れたら、終わる、だろうか。
泣いてはいない。
涙は出ない。
(本気、だったのかな?)
自分の気持ちさえ、疑ってしまう。
冷静ではない証拠だ。
感情的に怒り、悲しみ、苦しんでいる自分を客観的に見ている自分がいる。
そうして、冷静な自分は、電話に手を伸ばせと誘うのだ。
嫌だと首を横に振れば、電話の音はさらにボリュームをあげた。
そんなはずはない。
耳が、痛かった。
『好きだ』と言った。
『愛してる』と囁いた。
その眼差しも声音も全て、嘘濡れの世迷言だったのか。
(本当に?)
震える指先で携帯電話を掴んだ。
表示されている四文字。
(もっと簡単に嫌いになれたら、こんなに苦しまずに済んだのに)
溜息と共に気持ちも消えてなくなればいいのに。
まだ震えたままの指で、通話の二文字に触れた。
『好きだ。嘘じゃない。本当に好きなんだ』
怒鳴る声。
あまりの大声に反射的に携帯電話を投げ捨てた。
(……耳が、痛い)
よく聞こえないけれど、まだ、ずっと、何かを叫んでいるようだった。
一体どこにいるのか。
「……うるさいんですけど」
電話もあなたも。
『どうしたら、信じてくれんの?』
「嘘、だったんデショ?」
『まさか。お前に関しては全部本気だった。これからも』
「都合のいい遊び相手って言った」
『なんでそこだけ信じるんだよ』
「本気だから」
『……愛してんの、お前だけだよ、蛍』
「嫌いになりたいんだけど」
『おい』
「嫌いになれないの、責任とってよ」
『……任せろ』
本気と遊びの曖昧な境界線に惑わされながら、その言葉に嘘は無いと信じたかった。
終わり
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